大学路(テハンノ)2 アジアのブロードウェイ 1
世界が感嘆する唯一の小劇場クラスター
大学路は世界でも類をみない劇場密集地域だ。だからだろうか?大学路はよくブロードウェイと比較され、〈アジアのブロードウェイ〉と言われることも多い。
数年前、日本のある著名な劇場専門設計社の代表と会う機会があった。彼は“大学路になぜこれほど劇場が多いのか”“劇場にどれだけの観客が訪れるのか”ととても不思議そうに聞いてきた。最近、大学路と関連する各種会議に参加する度に、大学路の劇場数は80館だ、いや90だ、100を越えたと様々な説が飛び交う。しかし、誰ひとり正確な数字を言えないことに気づいた。そこで筆者も気になり、いったいいくつの劇場が大学路にあるのか数えるために出発した。多くの人が80以上と答えているのだから、多いことは多いのだろう。梨花交差点から恵化ロータリー、城北洞方面の道を経て成均館大学を通り、再び大学路に戻ってみたが、実にその数は97館にもなった。これに、現在開館(建設)を準備している韓国文化芸術委員会の大学路複合文化空間をはじめ5〜6ヶ所に劇場ができる予定だ。今や、大学路に劇場のひとつも所有していなければ演劇人じゃないのかもしれないと思えるほど劇場がかなり多い。
文化観光部の発表した〈2005公演芸術実態調査〉(隔年でおこなわれる調査のため2007年に関しては現在進行中)によれば、韓国全体の劇場(公演場)数は541館、そのうちソウルには131館があるが、ここ2年でいくら大学路に新しい劇場が続々とできたとはいえ、97館という数字は韓国全体の劇場状況からみても、ものすごい数字であることは明らかだ。調査によると、ソウルについで京畿道が88館と2番目に多く、慶尚南道が34館、全羅北道が31館、釜山が30館の順になっている。大学路には、ソウルの別の地域と残り15の市・道を合わせた数よりさらに多い劇場があることになる。もっとも劇場が少ない地域は蔚山広域市で6館だが、これは大学路の1/15にすぎない。全世界のどの都市よりも多くの劇場がわずか半径2kmという狭い地域に集まっているのだから、韓国人だけでなく全世界の人々が驚くことだろう。
大学路VSブロードウェイ
全世界の公演芸術のメッカと言われるブロードウェイはどうだろうか?ニューヨーク市マンハッタンは、南北を横切るストリートと東西をつなぐアベニューのマス目状で構成されている。その中、西南端から東北端へと対角線にのびている道がブロードウェイと言われる通りだ。マンハッタンの41Stと54St間、6Aveと9Ave間をブロードウェイ劇場街と呼び、300席以上の劇場だけをブロードウェイ劇場と認めている。(League of American Theater and Producers認定)
南北につながるストリートは1ブロックあたり約80m、東西にのびるアベニューは約300mだから、ブロードウェイの劇場街は南北約1.12km、東西約1.2 km、広さは1,344k?となる。大学路は南北1.2?、東西450m(大学路文化地区範囲)、540 k?なので、ブロードウェイの方が2倍以上大きい。しかし、ブロードウェイの劇場数は41館、大学路には97館の劇場があるのだから、大学路こそ全世界の真の公演芸術のメッカではないだろうか。
ブロードウェイの場合、41 Stから54Stで300席以上の客席を備え商業的な作品を公演する劇場をブロードウェイ、芸術性と興行性をあわせ持つ作品が公演される100席〜299席の劇場をオフヴロードウェイ、それ以下の客席の芸術性だけを追及する実験劇を主に公演する劇場をオフオフブロードウェイと呼んでいる。
大学路もブロードウェイのように‘イン大学路/オフ大学路’あるいは‘大学路南江/大学路江北’と言うことがある。大学路の6車線車道を基点にマロニエ公園側をイン大学路または大学路江南、公園の反対側のテミョン通りと恵化洞と成均館大学の方をオフ大学路または大学路江北と分けて呼ぶのだ。これはブロードウェイのように座席数や公演物の性格を基準に分けたのではなく、まず劇場ができはじめたイン大学路の地価が上昇し、その上昇とともにまだ地価の安い反対側に劇場を作りはじめたからだ。実際、大学路江南と大学路江北の水準(飲食店のメニューや価格)も、江南と江北で差があるように江南の方がずっと高い。(大学路に出てきたものの財布が淋しいという人は、大学路江北に行けば安くて美味しい店が多いので愛用を)最近、再びイン大学路側に劇場が続々とできているが、これはイン大学路の方がはるかに便利で観客がこの地域を好んで移動するため流動人口も多いからだ。もちろん、大学路の〈イン/オフ〉〈江南/江北〉という名称は劇場の水準や性格とは何ら関係なく、大学路に暮らす仲間内で笑い話に使っている言葉なので聞き流してほしい。
多様な公演文化が混在する大学路
大学路は小さくとも大きなパワーを持つ大切な文化空間だ。大学路に来ればいつでも多様な各種公演芸術と出会える。だから、役者になりたい輩たちが風呂敷包みひとつを背負い見通しもないのに大学路に集まってくるのではないだろうか。
大学路では97館の劇場が毎日多様な公演で観客を迎えている。演劇から児童劇、ミュージカル、ダンス、コンサート、お笑い公演まで、観客は自分の好みで作品を選べる。最近、伝統演劇専用の小劇場まで成均館大学前にオープンした。
大学路が公演芸術のメッカとしてさらに発展するためには、新作を作っていくことも重要だが、“大学路に行けばいつでもあの公演が見られる”と言われるほどのレパートリー作品を増やさなければならない。ブロードウェイには、もっとも長くロングランを続けている作品に18年間毎日公演している『キャッツ』(今は幕を下ろし、ツアー公演中)がある。これ以外にも『オペラ座の怪人』『コーラスライン』『マンマ・ミーア』など、ブロードウェイに行けばいつでも名作が見られる。だから、全世界の人々はブロードウェイに押し寄せるのだ。大学路にもロングラン作品が次々に登場している。12年間観客の支持を受け続けている『地下鉄1号線』、ロングラン10年を越えた『ライアー』と『愛は雨に乗って』などだ。また、規模は小さいものの観客を集め続けている『オアシス洗濯所殺人事件』『葬儀屋ユ氏』『椅子は間違っていない』『一杯のうどん』『マリオネット』などは観客とともに記録更新中だ。今はまだ『地下鉄1号線』や『オアシス洗濯所殺人事件』『愛は雨に乗って』『マリオネット』などが専用劇場を持っているだけで、他の作品は貸館状況によって転々と劇場を移動しながら観客数を増やしているのが実情だ。しかし、いつかは10年、20年というロングラン作品とその専用劇場が大学路の歴史の1ページを飾ると信じたい。
本物のアジアのブロードウェイへと
大学路では多様な公演がおこなわれているものの、300席以下の小劇場(92館)がほとんどで、500席以上はアルコ芸術劇場大劇場が唯一という点が残念だ。もちろん規模が大きい劇場だから作品もいいというわけではない。ただ商業的価値を高めながらさらに多様な作品を舞台にあげるという観点から、1000席規模の劇場があればこそ世界レベルの競争力を育てられるのではないだろうかと考える。
大学路は単に劇場数の多い、韓国だけの文化空間ではない。大学路は海外の観客をも迎える準備をしなければならない。日本や中国、そして東南アジアの観客は高い料金を払ってまでも飛行機に乗ってブロードウェイやヨーロッパに行く。それより、ソウルに、大学路に来るような基盤を整えなければならない。(英語も韓国語も観客が聞き取れないのは同じこと。どのみち公演は心で見るものだ)最初から彼らに韓国のオリジナル作品を強要するのは難しいだろう。しかし、ブロードウェイやウエストエンドで公演されている名作を同時に大学路でも公演できるなら、海外の観光客はこの有名な作品を見るために大学路を訪れ、その後、彼らはおのずと大学路に魅了されるだろう。
すでに大学路は、数的には公演芸術のクラスターとしての地固めを終えた。『ナンタ』『ジャンプ』は海外市場でも競争力をもつ韓国を代表する文化商品・文化産業となった。これから大学路は文化空間としてよりも文化商品・文化産業を積極的に開発していかなければならない。個々が作品を売り込むより、大学路全体の巨大な文化産業でソウルのランドマークとして開発していくべきだと思う。本物のアジアのブロードウェイに、アジアの公演芸術のメッカになるために。(もどる)
ソウル文化財団機関紙2007年7月号
(ナム・ギウン、ソウル演劇協会事務局長)